リノベーションでバリアフリーな住まいへ
- リフォームコラム

リノベーションを検討し始めると、内装や設備の機能に意識が向きがちですが、実はバリアフリー化は、ご家族の安全性を高めることはもちろん、将来にわたって安心で快適な暮らしを維持するために欠かせない要素です。
多くの方が「バリアフリーは高齢者になってから考えれば良い」とお考えかもしれません。
しかし、バリアフリーとは高齢者の方や障がいをお持ちの方だけでなく、小さなお子様から妊娠中の方など、誰もが年齢や身体能力に関わらず安全に、ストレスなく生活できるように住環境を整備することです。
つまり、すべての人にとって快適で安全な住宅を作るための基本的な考え方なのです。
こちらの記事では、戸建て住宅のリノベーションにおいて、バリアフリー化を成功させるためのポイントを専門家の視点から詳しく解説していきます。
将来を見据えた、賢いリノベーション計画にお役立てください。
バリアフリーリノベーションの基本理念
リノベーションにおけるバリアフリーの目的は、単に段差をなくすことだけではなく、生活動線全体の安全性と利便性を向上させることにあります。
特に戸建て住宅の場合、マンションと比較して敷地内での移動や、階層間の移動が多くなる傾向にあり、より総合的な計画が求められます。
バリアフリーが必要な理由

日本の平均寿命は伸び続け、人生100年時代と言われています。今健康な方でも、いつか年齢を重ね、身体能力が低下する時期が訪れます。
その時、住み慣れた家が「危険な場所」に変わってしまうことを想像してみてください。
例えば、わずか数センチの段差でもつまずいて骨折につながり、それがきっかけで要介護状態になるリスクは少なくありません。
また、ご家族に急な怪我や病気があった場合、すぐに自宅での療養が必要になることもあります。
バリアフリーリノベーションは、そのような不測の事態や将来の変化に備えるためのリスクマネジメントとも言えます。

専門家としてお勧めするのは、リノベーションのタイミングで、予防的なバリアフリー化を行うことです。
住まいの構造を大きく変えるリノベーション時であれば、後から部分的に改修するよりも費用対効果が高く、デザインや機能性を損なうことなく、統一感のある設計が可能です。
特に戸建て住宅でバリアフリー化が重要となるのは、玄関アプローチ、浴室、トイレ、階段といった場所です。
これらの箇所は、転倒事故が発生しやすい魔の空間とも呼ばれます。
これらの空間を重点的に改善することで、ご自宅での生活における安全性が劇的に向上します。
設計段階から専門家としっかりと話し合い、ご家族の現在の状況と将来のライフステージを見据えた計画を立てることが、成功の鍵となります。
生活動線の安全性向上
浴室のバリアフリーリノベーション
ヒートショック対策と転倒防止

浴室は家の中で最も温度差が大きく、滑りやすい危険な場所です。
冬場のヒートショックは、命に関わる重大な事故につながる可能性があります。
バリアフリーリノベーションでは、このヒートショック対策が非常に重要になります。
まず、浴室暖房乾燥機を導入し、入浴前に浴室全体を温めておくことは必須の対策と言えます。
また、窓を二重サッシにするなどの断熱改修も同時に行うことで、省エネ効果と安全性の両方を高めることができます。
転倒防止
浴槽のまたぎ高さを低くすることで、出入りを楽にします。理想は40cm程度とされています。
また、床材は必ず水はけが良く、滑りにくい素材を選んでください。最近のユニットバスの床は、水に濡れても滑りにくい加工が施されているものが主流です。
手すりの設置

浴槽への出入り時や立ち座り時、そして洗い場での移動を補助するために、縦型、横型の手すりを使用する方の身体の高さや動線に合わせて適切な位置に設置する必要があります。
トイレのバリアフリーリノベーション
空間の確保と手すりの配置

トイレもまた、立ち座りの動作が必要なため、転倒リスクの高い場所です。
バリアフリー化のポイントは、十分なスペースの確保と適切な手すりの配置です。
将来的に車椅子での使用を想定する場合、トイレブースの広さは間口75cm以上、奥行き120cm以上が最低限必要とされます。
車椅子での回転スペースや介助スペースを考慮すると、間口100cm以上、奥行き150cm以上を確保できるのが理想的です。
また、出入り口は引き戸にすることで、開閉時の負担を減らし、万が一室内で倒れた際にも外部からの救助が容易になります。
手すりの種類

手すりは、立ち座りの動作を補助するL字型の手すりが一般的です。
便器に向かってどちらの利き手か、どのような立ち座りの動作をするかによって、最適な手すりの形状や設置位置は異なります。
便器の両側に手すりを設置する、または跳ね上げ式の手すりを採用するなど、専門家と使用者の意見をすり合わせながら配置を決めましょう。
階段のバリアフリーリノベーション

階段での転落事故は、深刻な事態につながる可能性が非常に高いです。
リノベーションで階段を改修する際は、段差の高さ(蹴上)を低く、踏み面(足を乗せる部分)を広くすることで、昇降しやすくなります。
手すりは両側に設置しましょう。
片側だけではなく両側に設置することで、どちらの利き手でも利用でき、昇降時の安定性が格段に向上します。
また、階段の照明を明るくし、足元をしっかりと照らす工夫や、階段の端を踏み外さないようにするための滑り止めの設置も欠かせません。
玄関アプローチのバリアフリーリノベーション

玄関までのアプローチに階段がある場合は、スロープの設置を検討するのも良いでしょう。
ただし、安全なスロープには十分な勾配(こうばい)が必要です。
一般的に車椅子での自走を前提とする場合、勾配は1/12(8.3%)以下が望ましいとされていますが、敷地面積の制約からこの勾配が確保できない場合も多々あります。
スロープの設置が難しい場合は、昇降機(リフト)の設置スペースをあらかじめ確保しておく、または手すりを両側に設置するなどの対策を複合的に行うのが良いでしょう。

玄関土間とホールの段差も、将来的に車椅子での出入りを想定するなら極力なくすことが理想ですが、これも建築上の制約がある場合があります。
その際は、段差解消機や安全な式台(しきだい)を設置する方法もあります。
段差をなくすことができれば、ベビーカーの出入りや重い荷物を運ぶ際にも非常に楽になります。
戸建て住宅のバリアフリーリノベーションは単なる住宅の改修ではなく、ご家族の未来の「安心」と「快適」を買う投資だと考えてください。
段差の解消や手すりの設置、ヒートショック対策など、一つ一つの対策が将来の転倒リスクや介護リスクを軽減し、住み慣れた家で長く、健康的に暮らすための基盤を築きます。
リノベーションを検討される際は、専門家に相談し、自分の家に最適なプランを見つけることをお勧めします。
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